なぜ「セックスしたら出られる部屋」ではなく「セックスしないと出られない部屋」なのか

「セックスしないと出られない部屋」というのをご存知でしょうか。

主に二次創作において、同性の二名（異性も可）を密室に閉じ込め、出るためにはセックスをしなければならないというシチュエーションのために用意される架空の設備です。

セックスしたかをどのように判断しているのか、そもそもセックスの定義は何かなどツッコミどころはありますが、そこは考えないことし、今回は「セックスしないと出られない部屋」について掘り下げて考えてみます。

突然ですがここで問題です。

【問題】
創作において「セックスしたら出られる部屋」ではなく「セックスしないと出られない部屋」が多く用いられる理由を簡潔に説明してください。

回答できますでしょうか。

できた方は、数学・創作の両方について造詣が深い方だと思います。

創作はおいといて、なぜ数学？と思った方がいるかもしれません。この問題の回答は最後に述べるとして、まずは以下の補題を考えてみます。

【補題】
「セックスしないと出られない部屋」について、正しいと言えるものを全て選んでください。
1.セックスしたら必ず部屋から出られる
2.セックスしなくても部屋から出られる
3.部屋から出られたならば必ずセックスしている
4.部屋から出てきていないならばセックスしていない

これは高校数学で習う「命題と論理」の問題です。

命題とは真偽（正しいか間違ってるか）がはっきりする事柄のことで、例えば

3は2より大きい（真）
サンシャイン池崎は日本の総理大臣を務めたことがある（偽）

などです。今回は

命題A：(二人は部屋から)出ている
命題B：(二人は)セックスをしている

を考えます。

(補足)「出られる」は「出ることが可能である」という意味ですが、「出られるのに出ない」という選択肢を考えてしまうと論理的な議論が出来なくなるため、「出られる」ではなく「出ている」としています。

「セックスしないと出られない部屋」を命題としてわかりやすく定義すると

（部屋に入った二人が）セックスしていないならば、(その二人は部屋から)出ていない

ことを保証する設備と言えます。そして「セックスしないと出られない部屋に閉じ込められた」ということは、上記太字の命題が真であるということを意味します。

数学的に書くと

命題：￢Ｂ⇒￢Ａ　が真である

です。ちなみに
￢ＡはＡの否定、つまり「(二人が部屋から出ていない」
￢ＢはＢの否定、つまり「(二人が)セックスしていない」
です。

⇒は「ならば」と読み、十分性を表します。意味は「Ｂじゃなければ、必ずＡじゃない」ということですね。「￢Bであることは、￢Aであることの十分条件である」とも言えます。

数学アレルギーの方は、もうここでギブアップかもしれませんが、もう少しだけお付き合いください。

こういう問題はベン図を書けば一発で理解できます。

「Bでない(緑に入っていない)ならばAでない(青に入っていない)」ことが視覚的にわかりますね。
この図を見ながら、補題を考えてみます。

（再掲）
【補題】
「セックスしないと出られない部屋」について、正しいと言えるものを全て選んでください。
1.セックスしたら必ず部屋から出られる
2.セックスしなくても部屋から出られる
3.部屋から出られたならば必ずセックスしている
4.部屋から出てきていないならばセックスしていない

1.は誤りです。セックスしているのに部屋から出ていない可能性(￢A∧Ｂ≠∅)を否定できないからです。4も同じ理由で誤りです。
2.は誤りです。セックスしていないのに部屋から出ていることはあり得ない(A∧￢Ｂ=∅)からです。
3.は正しいです。部屋から出ているならば必ずセックスしている(A∧Ｂ=A)からです。

したがって、補題の正解は「3」となります。つまり

「セックスしないと出られない部屋」の場合、部屋から出てきた二人はセックスをしたことが確定する訳ですね。ここが重要なポイントです。

それでは、大本の問題を考えてみましょう。

「セックスしたら出られる部屋」はどのような論理構造を持つ命題でしょうか。

上記と同様に