手当の所得制限を「金持ちざまぁ」で済ませてはいけない理由

雑記

新型コロナウイルスの影響を受けた人たちへの支援策の一つ、18歳以下への10万円の給付に、所得制限が設けられることになりました。

制限される年収ラインは扶養親族の人数などによって異なりますが、例えば配偶者と中学生以下の子ども二人を扶養している世帯の場合、世帯主の年収960万円が目安になります。

これに対し、給付対象を18歳以下に限定することや、所得制限が世帯年収ではなく世帯主年収基準であることなど、様々な視点で物議を醸していますが、ここでは「手当に所得制限を設けること」自体にフォーカスして、大切なことを述べたいと思います。

結論から言います。

このような「手当・給付に対する所得制限」を安易に許してはいけません。結果的に、すべての国民が苦しむことになるからです。

その理由を、簡単な例を用いて説明します。

所得による分割統治の例

ある国では、すべての国民が毎年100万円を受け取れる手当がありました。

ある時、政府が「年収1000万円以上の人は手当を無くします」と言いました。
年収1000万円以上の人たちはもちろん反対しましたが、彼らは国民の1割しかいません。
残り9割の人は自分に関係が無く、むしろ自分よりも裕福な人への嫉妬の気持ちから、賛成しました。
こうして、年収1000万円以上の人は手当がなくなりました。

しばらくして、政府が「年収500万円以上の人は手当をなくします」と言いました。
年収500万円以上の人は、国民全体のちょうど半分です。
年収500万未満の人は、自分には関係ないからと、賛成しました。
年収1000万円以上の人も、「自分たちと同じように苦しめばいい」と思い、賛成しました。
こうして国民の6割が賛成し、年収500万円以上の人は手当がなくなりました。

さらに何年か経って、政府が今度は「年収300万円以上の人は手当をなくします」と言いました。
年収300万以上の人は9割います。
しかし、既に手当を廃止された年収500万円以上の人たちと、自分には関係ないと考えた年収300万円未満の人たちを合わせた6割が賛成したため、年収300万円以上の人も手当がなくなりました。

そしてついに、政府は「手当を全面廃止にします」と言いました。
もちろん年収300万円未満の人たちは反対するも、時既に遅し。
手当を廃止されている9割の人が賛成し、手当は全面廃止されてしまいました。
手当の廃止で浮いたお金は、政府高官やそれを裏で牛耳る官僚、利権絡みの企業関係者たちの私腹を肥やすのに使われました。

既に日本でも行われている分割統治

上記の例では、最初は1割の高所得者が対象だった手当の削減が、いつの間にか全国民に適用されてしまいました。

もちろんこれはわかりやすく単純化したモデルですが、現代の日本でも、既に同様なことが起こり始めています。いくつか例をご紹介します。

2011年
・15歳未満の子を扶養する世帯主は増税(年少扶養控除を廃止)
 ※代わりに児童手当が支給されるも、中高所得層は年少扶養控除廃止の影響の方が大きい

2012年
・目安年収960万円以上の子育て世帯は負担増(児童手当特例給付の導入)

2019年
・年収850万円以上の会社員は増税(給与所等控除の引き下げ)
・年収1100万円以上(目安)で配偶者を扶養する世帯主は増税(配偶者控除の所得制限)
・年間所得2400万円以上は増税(基礎控除の所得制限)

2022年
・目安年収1200万円以上の子育て世帯は負担増(児童手当特例給付の廃止)

なお児童手当に関しては、政府による何重もの裏切りによる詐欺同然の状態であり、以下の記事で詳しくまとめていますので是非ご覧ください。

いかがでしょうか。年収1000万円前後の層をターゲットに、増税や手当の削減を行っているフェーズであることは火を見るより明らかですね。

これを容認したままでいれば、いずれターゲットとなる年収層が下がっていくことは、間違いないでしょう。
そしてそれは上記の例のように、国民を所得で分断して国民同士で争わせて、真の敵である政府や財務省に矛先が向かないよう、着々と進められます。このようなやり方は分割統治と呼ばれ、歴史上何度も繰り返されてきた手法です。

事実、今回の10万円の給付にあたっても「年収960万円で10万円の給付を受け取れるのはおかしい」「もっと基準年収を下げろ」といった意見が散見されます。それが支配者たる政府や官僚の狙いだとも知らずに。

所得以外による分割統治も始まっている

日本政府は所得の多寡に限らず、子持ち世帯とそうでない世帯、高齢者と若者など、ありとあらゆる分断を利用して分割統治を行っています。

児童手当の削減に、いいぞもっとやれと思った独身者はいませんか。

年収200万円以上の後期高齢者の医療費負担が1割から2割になることが決まった際、諸手を挙げて喜んだ若者はいませんか。

それ、全部政府の思う壺なんですよ。

国民に出来ること

我々国民が直接NOを突き付けられるのは政府だけです。真の黒幕である財務省に直接鉄槌を食らわせることは、残念ながらできません。

しかし、それでも何もせずに好き放題やらせるよりは、ずっとマシです。

そのためにはまず、「支配者は常に国民の分断を狙っている」ということをしっかり意識することが大切です。支配者があなたの味方をしているようなそぶりを見せた場合、それはあなたに味方しているのではなく、支配者が本当に狙いたい敵を、あなたに攻撃してほしいという合図かもしれない、と疑うのです。

国民が狭い視野で自分の短期的な損得だけを考えていると、あっという間に分割統治の罠に嵌められてしまいます。

例えば、自分には一見関係無さそうな手当や給付の削減、増税の話が出た時に、それは本当に正しいのかを考えてください。

そして少しでもおかしいと思ったら、選挙でその意思を示してください。国政選挙でも、地方選挙でも。一人一人の力は小さくとも、ゼロではありません。もちろん、私が今しているように、声を上げることも大切です。

少しでも共感いただけたら、この記事をSNSや身近な方にシェアいただければ幸いです。

コメント