新型コロナウイルスによる困窮者への支援策の一つ、18歳以下を対象とした10万円給付は、児童手当と同様の所得制限を設けることに決まりました。
この理由について、政府は「スピード感を持って給付を行うため」としていますが、おかしな点があります。
・児童手当は所得制限の対象になっていても特例給付があり、自治体に振込先情報が存在します。したがって、15歳以下の子については、所得制限をしようがしまいが事務処理コストは変わりません。
・逆に16-18歳の子は児童手当の対象外なので、そもそも児童手当の仕組みは使えません。
※実際、16歳から18歳の子については対象者からの申請が必要な仕組みになると説明されています
以上より、10万円の給付条件を児童手当の所得制限に合わせることには、なんら合理性がないことがわかります。
そもそもスピードを最優先にするならば、全世帯を対象に現金給付すれば良いわけで、わざわざ所得制限をしたり、更に時間とコストをかけて半額分をクーポンにするような煩わしいことをする必要性は皆無です。
ではなぜ政府は「児童手当の所得制限に合わせる」ことにこだわるのでしょうか。
これまでの経緯を振り返ると、政府、そして裏にいる財務省の恐ろしい魂胆が浮かび上がってきます。
政府・財務省の真の狙い
結論から言います。
政府は「児童手当を縮小・廃止したい」と考えているのだと思います。
その筋書きを、以下で説明します。
まず、今回の10万円給付に児童手当と同様の所得制限を設けることを決めました。
公明党が所得制限は付けるべきでないと反対していましたが、自民党が強引に押し切った形です。
繰り返しますが、児童手当と同じ条件で所得制限を行うことには何ら合理性がありません。
これにより国民は、今回の10万円給付は世帯で一番所得が高い人の所得で制限がかかることを認知します。
児童手当と同様の条件ですが、児童手当の所得制限に引っかかる人は全体の1割程度であり、あまり話題にはなっていなかったのでしょう。
しかし今回はニュース等でも大々的に取り上げられたため、子どもや所得制限の有無に関わらず、多くの人が知ることとなりました。
ほどなくして、所得制限は世帯合算でないと不公平だという方向に世論が誘導され始めました。
マスコミも以下のような不自然なほど極端な例で、世帯で一番所得が高い人を基準とした所得制限を批判するような報道を始めました。
加えて、この所得制限は、現行の児童手当と同じ条件であることも強調されます。
するとどうでしょう。国民の世論は「そもそも児童手当が世帯年収で制限されていないことがおかしい」という方向まで進んでいきました。
そしてついに、自民党の高市早苗氏が「児童手当も世帯合算での所得制限に変えるべきだ」と本音を吐き出します。立憲民主党の蓮舫議員をはじめ、一部の野党議員もそれに賛同する形となっています(蓮舫…諸悪の根源が何を言う…と思ったのは私だけではないはずです)。
世帯合算になった場合の所得制限がどこに引かれるかは不明ですが、単純に二倍(子ども二人で約1900万)のラインになるとは思えませんので、対象者が減らされることは間違いないでしょう。
つまり、マクロで見れば子育てに関する財政支出を減らすことになるわけです。
これが政府・財務省の狙いだったのでしょう。
そもそも今回の10万円給付は「コロナ困窮者の救済」が目的であって、子どもの生活や教育を支える児童手当とは何の関係もありません。
それなのに、どさくさに紛れて児童手当の支出を削ろうとしているのです。
火事場泥棒以外の何物でもありません。
児童手当に対する誤解
そうは言っても、
・年収1000万近い人が児童手当を貰うのがそもそもおかしいのでは?
・児童手当は世帯年収で制限されるべきなのでは?
と思っている方もいるかもしれません。
その考えこそまさに、政府・財務省の仕掛けた狡猾な罠に嵌められている状態です。
現在の児童手当は、2011年の旧民主党政権時代に、「控除から手当へ」のスローガンのもと、15歳以下の扶養控除(年少扶養控除)の廃止と引き換えに導入されたものです。
扶養控除は憲法で定められた「生存権」を保障するために存在する仕組みで、簡単に言えば「健康で文化的な最低限度の生活をするのにかかる費用には課税しない」ために存在します。
この辺りはいずれ別の記事で詳しく説明したいと思います。
民主党政府は当初、児童手当は所得制限せず金額は子ども一人当たり26,000円/月支給するとうたっていました。
生存権を保障する扶養控除の引き換えなのですから、所得制限が無いのは当たり前ですね。
しかしながら、最終的には所得制限が設けられ、金額も大きく減らされました。
結果として、子育て世帯は年少扶養控除廃止前に比べて所得税/住民税の負担が増え、増税された形になっています。
もっと端的に言えば、一部の子どもの生存権が侵害されている状態になっているのです。
そして与党が自民党に戻ってからも、この異常状態は解消されていません。
それどころか、2022年からは一部の子育て世帯を対象に、児童手当を0円にするというあり得ない政策が施行されることに決まりました。
詳しくは以下の記事で説明していますので、こちらも是非ご覧ください。
いかがでしょうか。
政権をまたいで行われ続けている、政府・財務省から国民への詐欺行為ともいうべき悪事と、それによって子どもの生存権が侵害されている現状をご理解いただけたかと思います。
ここで児童手当の所得制限を世帯合算にするということは、その詐欺行為を認め、さらに子どもの生存権侵害を助長することに他なりません。
今がラストチャンスかもしれない
「控除から手当へ」とうたった詐欺行為から早10年。
年少扶養控除があった時代から子育てしている人は減少し続け、上記の事実を正しく理解している人はごく少数になってしまいました。
あと数年も経てば、当時の経緯を知る子育て世代はほぼいなくなり、政府や財務省のやりたい放題に疑問を呈することすらできなくなってしまうかもしれません。
今、国民が正しい知識と理解を持って政治に訴えかけていかなければ、手遅れになってしまいます。
かくいう私も、年少扶養控除が廃止された2011年当時は子どもどころか結婚すらしておらず、扶養控除って何?というレベルでした。
数年後に結婚して子どもが生まれましたが、児童手当が貰えた時はラッキーと思いましたし、翌年所得制限かかって特例給付になっても、まぁ仕方ないのかな、くらいに思っていました。
FP資格試験の勉強をする中で、15歳以下の扶養控除が無いことに疑問を持ったことがきっかけで、民主党政権の失政と、それを10年経っても正さないばかりか、事実を隠してさらなる子育て世帯軽視・子どもの生存権侵害を続ける現政府への怒りが沸きました。
そして、自分の不勉強を嘆きました。
私が今こういった情報発信を行っている理由は、過去の私と同様に現役子育て世代の多くはこの経緯を知らないまま騙されているのではないかとの思いからです。
政府が子どもの生存権を侵害している異常事態にも拘らず、子育てをしている当事者ですら、そのことに気付いていません。
もちろん、知らない国民が悪いのではありません。知らせない政府が悪いです。
しかし、支配者はわざわざ自分に不利な情報を、被支配者に伝えません。
今回の10万円給付に便乗した児童手当の所得制限に関するメディアの報道を見ていても、知ってか知らずか、面白いくらい年少扶養控除に触れることがありません。
国民自ら正しい情報を学び、理解し、そして仲間に伝えていくしかないのです。
「所得制限にかからないから関係ない」「子どもがいないから関係ない」ではありません。
児童手当の次は、老人扶養控除が狙われるかもしれません。扶養控除と同じく生存権の保障にかかわる所得控除や基礎控除の削減も、既に始まっています。
所得、年齢、家族構成など様々な違いによる国民の分断と対立こそ、支配者たる政府の狙いなのです。
このことは、以下の記事で簡単な例を用いて説明していますので、是非ご確認ください。
この記事を読んでいただいた皆さまは、児童手当の導入経緯と政府の詐欺行為を正しく理解いただけたと思います。
願わくば、同じように正しく理解する仲間を増やすことに協力いただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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