「年収1000万円はカツカツか」問題に終止符を打つ

雑記

Twitterやyahooニュースのコメント欄でたびたび勃発する「年収1000万円はカツカツか」問題。

「年収1000万円程度では生活するだけでカツカツである」派

「年収1000万円で生活がカツカツなのは贅沢しているからである」派

による、何の生産性も無いバトルが繰り広げられる問題です。
この不毛なバトルに終止符を打ち、少しでも皆が幸せな方向に向かうことを願って、本記事を書くことにしました。

バトルの原因

私はこのバトルには3つの原因があると考えています。

  1. 年収1000万円の実態を正しく理解できていない人が多い
  2. 前提条件が揃っていない
  3. 真の敵の思惑にハマっている

以降で1つずつ説明していきます。

年収1000万円の実態

こんなツイートを見つけました。

実際に年収1000万円以上かそれに近い年収を稼いだ経験がある方ならおわかりでしょうが、これは大きな誤りです。

年収1000万円の手取は700万円強です(扶養家族や住宅ローン控除等の有無により多少変わります)。

参考までに、年収別の手取り額は以下のサイトをご覧ください。

【早見表】年収200万円~1億円の手取り|計算方法や所得税・住民税額も解説
サラリーマンの方向けに年収から手取りを簡単にできる早見表と、所得税・住民税の計算シミュレーションを掲載しています。年収から手取りになるまでに引かれる所得税・住民税、厚生年金保険料、健康保険料・介護保険料、雇用保険料について解説しています。

累進課税を正しく理解していないと、自分より高所得な人の手取りを高めに考えてしまう可能性があります。

さらにイメージしやすいように、金額を月収に直してみます。
年収1000万円(ボーナスは2か月分×2回支給)のサラリーマンの、月の手取りはいくらでしょうか。
ズバリ約45万円です(額面は約63万円)。

月45万円が多いか少ないかは次章の議論に関わるのでここでは触れませんが、少なくとも「タワマンに住んで子ども二人を私立中学に通わせつつブランド物を買い漁る」みたいな暮らしが出来ないことは、さすがに誰でもわかると思います。

ちなみにこのモデルケースだとボーナスの手取りは90万円×2回(年収の25%)ですが、ボーナスは突発的な支出や将来への備え、自分や家族への細やかなご褒美に使うもので、月々の家計に組み込むべきでは無いでしょう。

年俸制であれば手取月収は約58万円(額面は約83万円)ですが、突発的な支出や将来への備えが必要なのは同じですから、「月45万円でやりくりする」という考え方は同様です。

「年収1000万円の人でも、月に45万円しか使えない」という事実は、国民全員が知っておくべきでしょう。

前提条件が揃っていない

「吉野家の牛丼並盛でお腹いっぱいになるか」という命題の真偽はどちらでしょうか?(ひとまず”お腹いっぱい”の定義は置いとくとして)

答えは「一意に定まらない」です。つまり、そもそも命題として成り立ちません。

年齢、性別、体系、普段の生活(消費カロリー)、更には食べる前の空腹度によって答えが変わるからです。

要するに「前提条件が揃っていない」のです。
当たり前すぎて何言ってんだと思うかもしれませんが、そんな当たり前の「前提条件を揃える」ということを、年収1000万円カツカツ問題になると、なぜか忘れてしまう人が多々いるのです。

  • 住んでいる地域は?
  • 家族構成は?
  • 資産状況は?

パッと思いつくだけでも、家計のやりくりに直結するファクターが多々ありますよね。これらが揃っていない状況で「足りる」「足りない」を議論しても、合意形成できるわけがありません。
もっと言えば、すべての前提条件を揃えることなどできないので、そもそも合意形成をはかること自体無謀です。

「カツカツだ」と言っている人がいるならば、(多少テコ入れの余地はあるにせよ)その人の生活はカツカツなのです。

「余裕だ」と言っている人がいるならば、(他人から見れば無理に倹約しているように見えても)その人の生活は余裕なのです。

そこで言い争ったところで、相手が「そうですか」と納得する訳がありません。

真の敵は誰?

そもそも「年収1000万円はカツカツか」バトルが沸き起こるのは、どういったときでしょうか。

それは政策により社会保障が削られようとしている時です。

昨今、配偶者控除や児童手当特例給付の所得制限など、年収1000万円前後の庶民を狙い撃ちにした社会保障の削減政策が次々と行われています。

もちろん保障を削られる側は反対しますが、それに対して削減基準の所得に満たない人の一部から「それだけ稼ぎがあれば手当が減っても大丈夫だろう」といった心無い声が上がることで、「年収1000万円はカツカツか」バトルが勃発する訳です。

削られない側の一部は「自分より裕福な(ように見える)人が苦しむのはいい気味だ」と考えてバトルをしかけ、削られる側は「いかに生活が苦しいか」を訴えて応戦する構図です。

しかしこのバトルは、支配者たる政府や財務省に仕組まれたものです。自分が削減基準に満たないからと安易に賛成していると、いずれ取り返しがつかなくなることは、以下の記事で説明しています。

不毛なバトルにより、本来一丸となって社会保障の充実や税の有効活用を訴えるべき国民が分断され、矛先が真の敵である政府・財務省から反らされていることに気付かなければなりません。

まとめ

  • 年収1000万円の人が1ヵ月に使えるお金は45万円だけ
  • 居住地・家族構成・資産等の前提条件が異なる中で、額面収入だけで「足りる」「足りない」を論じることは無駄
  • 所得による国民の分断・対立は政府の思う壺なので、自分の損得だけでなく一丸となって、社会保障の削減などの悪政にはNoを突き付けるべき

この記事を読んだ方が、今後「年収1000万円はカツカツか」という不毛なバトルを起こさない・応戦しないことを願っています。

 

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